後輩と先輩 4

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 触れた唇はとても温かい。  カサついた唇をぺろりと舐められて、思わず体が跳ねた。  触れるだけの長いキスが続いたかと思えば、音を立てて唇に吸いつかれる。  触れるか触れないかの距離だけ離れ、再び噛みつくようなキスを施されるものだから。一回だけとは言ったものの、この所作のどこを区切って一回と言って良いものか分からない。  目を瞑って全てが終わるのを待っているだけだと言うのに、酷く脈打つ心臓のせいで小さく息があがる。空気を取り込もうと、唇を開いた矢先。その隙間から押し込まれるように舌が進入してきた。  上顎を撫でられ、歯列を嬲られる。  奥へとしまいこんだ舌はいつの間にか引っ張り出されており、濃厚に絡まる感触がゾクゾクと妙な感情を湧き立たせた。 「……んっ……ふ、ぁ」  俺は込み上げる感情のはけ口が分からず、ギュっと咲人の腕を掴んだ。  相手が咲人だと言う事は分かっているのだけれど、体が熱くなる。  これほどまでの深いキスを施されては、俺だって、変な気が起きない訳ではない。まるで応えてくれと言わんばかりのキスに、俺は思わず咲人のそれを絡め取っていた。  驚いたように、ぴくりと動きが止まった舌を嬲り、吸いつく。互いが深く絡み合おうとする事で、室内には厭らしい水音が響きだした。  ――ヤバイな、と思った。  これが男女であれば、このままベッドインの雰囲気だ。  しかし、男同士でそんな事はありえない。  それ以前に、こうやって咲人とキスをしている時点でありえないのだけれど。  すると、俺の顎へと当てられていた掌がゆっくりと動き出す。  首筋を通り、鎖骨を撫で、そのまま胸板へと移動するつもりらしい。
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