第1章

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「ーー危ないっ!」 強烈な力で前方に引き寄せられると同時。世界が回転して、私は空へ吸い込まれた。 何故こんなことになったのか。それは昨日の夕方まで遡る。 講義を終え、次の講義まで時間が空いてしまった私はふらふらと学生食堂を訪れた。特に腹も空いていないのだが、ここならばお茶をただで飲める他テレビィなども設置されていて中々に時間を潰せるのである。そこで私は講義に隙間が出来る度にここへ顔を出し誰といるともなく何をするでもなく茶を啜っているという訳だ。あくる日もあくる日も食堂の片隅で茶を啜っているその姿はもはや茶飲み妖怪として大学の七不思議の一つとして数えられん勢いであったといっても過言ではないだろう。 そんな折。 「なんとあの『あまひげ』が、こんな街中で見られるんですねぇ」 夕方のご当地ワイドショーでアナウンサーがはつらつとした笑顔で言った言葉が私の聴覚を刺激した。
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