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あまひげといえば、糖度が18以上あるというフルーツのようなトウモロコシで、その味はどんなトウモロコシも及ばないらしい。らしい、というのは私自身そのトウモロコシを食べたことが無いからだ。あまひげの生産数は非常に少なくめったに市場には出回らない。そのため幻のトウモロコシとも呼ばれている。
番組はよくある繁華街の店を紹介する構成で、その中で露天でトウモロコシを売っている店をアナウンサーがみつけてはしゃいでいた。私はトウモロコシを生で食する彼女を食い入るように見つめた。糖度が高いため、茹でていなくても食べられる、と説明されていた。番組が終わると、お茶はすっかり冷めていた。私は立ち上がり熱冷めやらぬ足取りで講義へと向かった。
さて講義が無事に終わり、その夜のことである。私は孤独を友と掲げる陰気な男であるが、この驚くべき事実を誰かに伝えたくてたまらなくなった。学生寮の角部屋で悶々とすることに耐えきれず、唯一の友人であり隣人であるOの家のドアを叩いたのである。
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