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「勇者よ」
魔王は勇気を持って申し出た。
「次にプレイヤーが動いた時、わたしを倒してくれ」
突然の魔王の言葉に
「いきなり、何言ってるわけ?」
「いつまでもこのままいたいが、それはかなわんじゃろ」
「ちょっと、いきなり深刻な話やめてよね」
女拳闘士が言うが、魔王はあきらめたように細く喋った。
「勇者よ、最後はそなたの手で終わらせてくれ」
「魔王」
言って、勇者は剣をブンと投げた。
「勇者! 何をする!」
「酒飲んでる時に辛気くさい話しすんなって言ったよな。それに俺らはプレイヤーの駒なんだよ。自分で最後選べねぇしな」
「案外、魔王あなたが勝つかもしれませんよ」
魔法使いが微笑みながら言う。
魔王は込み上げてくる感情のまま、泣き出した。
「勇者よ! その仲間達よ! なんてお前達は気持ちの大きな器の持ち主なんじゃ」
「だから、プレイヤー次第なんだから、魔王泣くなよなぁ」
「面倒くさいだけなんですよ。プレイヤーは。何か別の楽しみ方で私達を翻弄してるんですよ」
「魔法使いいいこという!」
「すべてはプレイヤー次第よ」
女拳闘士はレッドドラゴンの肉を食べながら、笑いかける。
「魔王も気長に待ってなよ、ね」
魔王の心はもう言葉にすることのできないほど、感激して、ダーと涙を流しながら、うんうんと頷いた。
ラスボスがこれでいいのか、作者のツッコミは無視された。
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