第一章 魔王と勇者

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人数が増えたことで、場も楽しくなってきた。 「ところでさぁ」 女拳闘士が魔王に向かって尋ねる。 「魔王って、男? 女?」 勇者と魔法使いは「は?」と首を傾げている。 仲間の意図する内容がわからないのだ。 「わたしか? おなごじゃが」 「魔王、おまえ女だったのかよ!」 勇者が驚き叫ぶと、魔法使いもその化粧のせいですかねと嘆息した。 「やっぱり! 化粧が濃くてわかりずらいけど、そうじゃないかとは思ったのよね」 「魔王って女だったから、魔女王かよ」 「問題があるのか?」 「ある!」 勇者は女性には手をあげたくないというし、魔法使いも同類だという。 唯一の女性である、女拳闘士は別の意味で戦いたくないらしい。 「魔王、面倒くさいからそう呼ぶけど、一度、化粧を落としてみてよ、ね」 「人前でか」 難色をしめす魔王に勇者と魔法使いは、行ってこいと手をふる。 「わたしの化粧に問題が?」 「ある!」 女拳闘士の力強い言葉に、さしもの魔王も頬に手をあてる。 「わかった。クレンジングしてくる」 「あ、オイルはダメよ! 肌にダメージ残るから…あぁ面倒だ。一緒についていくわ」 「それはかまわぬが」 女拳闘士はるんるん気分で魔王に申し出た。 「あたしに化粧させてよね~ いい?」 「拒否権は?」 「「「ない」」」 勇者、魔法使いまでが女拳闘士に同意する。 魔王は軽く息を吐き出すとどうにでもなれと承諾した。 「じゃぁ、行ってくるわ」  「行って参る」 女拳闘士と魔王が退出すると、勇者と魔法使いは即効で話し合った。 「俺、魔王が女だって知らねぇし」 「わたしもですかね。そんな情報ありませんでしたよ」 「なぁ」 「恐るべしは女の勘ですね……」 「だな」 「このゲームの設定、なんらかの意図を感じますよ」 「ん?」 「だって普通は勇者だって攻撃魔法が使えますよ」 「そうなのか?」 勇者は回復系使えてたから問題なかったしと言う。 「作ったプログラマーのなんらかの意図を感じます」 「って言われてもそれわかんねぇし」 「ですね」 そうこう言ううちに女拳闘士と魔王が帰ってきた。 「おぅ、魔王」 勇者が言えたのはそこまでだった。 魔王は劇的に変化を遂げていた。 そこには絶世の美女と化した魔王がいた。
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