第一章 魔王と勇者

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「だりぃ」 扉を開けて入ってきた勇者の言葉に、豪華な玉座に座っていた魔王は立ち上がった。 勇者は剣を床にさして、その身を剣に預けている。 「どうしたのじゃ、勇者」 「だりぃ」 勇者の言葉に魔王は叫んだ。 「こら、勇者! おまえわたしを倒さなけれはならんのだぞ」 「それが超だりぃ」 「どうしたのじゃ。勇者、今までの戦いをみてきたが、剣捌きも鮮やかだったぞ」 魔王は玉座から降りると両手を広げた。 「さあ、わたしを倒すがよい」 「それが超絶だりぃ」 「なんだとぉ。プレイヤーは攻略本まで買ってエンディングをみたいのだぞ」 「それオレに関係ねぇし」 「魔王の矜持にかかわる」 「それ知らねぇし」 あー言えばこう言う、こう言えばあー言うらちがあかない。 「だいたいオレあんた倒す意味なくねぇ。相当数の魔物倒してオレ強くなりすぎたし、世界平和になったし」 「魔法があるじゃろうが」 「オレ回復系以外使えない設定。ちなみに剣もこれだけ、あとは邪魔だから売ったし」 「売るな!」 魔王は次第に悲しくなってきた。 と、勇者が床から剣をぬき、おもいっきり魔王に向かって投げだ。 魔王は絶大なる身体能力でそれをさけた。 「あぁ」 「今のはオレ悪くないからな。避けたおまえがわるい」 ふと魔王は勇者がひとりなことに気付き問うた。 「勇者よ、仲間たちはどうした」 「あ? 転職した。世界平和にバブルきて、今が稼ぎどきなんだとよ」 「なんじゃと……。わたしの存在意義は」 「ねぇな」
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