第一章 魔王と勇者

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「勇者よ。ではこのままなのか?」 「プレイヤーのやる気次第だな」 「恨みぞプレイヤー」 「逆恨みすんなって」 魔王はひたすら待っていた。自分が倒される日を、気を長くして待っていた。 「のぅ、勇者」 床に横になっていた勇者は、気のない声をあげる。 「なんだよ」 「まだ待つのかのぅ?」 「だから、プレイヤー次第だって」 「わたしはこのままのような気がしてきたぞ」 「今頃、気付くか?」 「なんとかプレイヤーにやる気を起こさせられないものかのぅ」 「無駄」 「やはりか」 「ゲーム世界の俺ら、現実世界に干渉できないし」 「やはり待つのか」 「気長に待てや」 「酒盛りでもするか?」 勇者、起き上がって手を叩く。 「魔王、ナイス」 「そうと決まれば」 魔王、玉座の横にあったテーブルの上の呼び鈴を鳴らす。 チリリン チリリン 通常ならしもべがくるはずだが、誰もこない。 「どうしたのかのぅ」 「あぁ!」 勇者、急に声をあげて謝った。 「……悪ぃ。この辺の魔物全滅させたの、忘れてた」 「……」 魔王は溜め息をつくと、玉座から降り、 「わたしが取ってくるわ」 言って、勇者の前から消えた。
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