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言って、勇者は酒瓶をひとつ取る。
そして、自らの服で簡単に汚れを拭き取ると、酒瓶の口にかじりつき、蓋を開けて飲みはじめた。
「豪快じゃのぅ」
魔王は呆気にとられながらも拍手を忘れない。
「魔王、おまえも飲めよ」
勇者は丁寧にも魔王の分の酒瓶の蓋を開けてやり、魔王に渡す。
「お、すまないのぅ」
受け取り、魔王は一口酒をあおるなり吹き出した。
「なんじゃこの度数は!」
「あ?」
勇者はご丁寧に酒瓶のラベルを見て、説明してくれる。
「毒サソリの酒みたいだなぁ。ちなみに俺のはスライムの酒だなぁ…そっちのほうがアルコール度数高けぇみたいだから、交換するか?」
「……よいのか?」
「あぁ、俺酒はそこそこ強いほうなんで」
「アルコールもか」
ずずーんと魔王の周囲が暗くなる。
「こら、魔王! 酒のんでる時に辛気くさくなるな! 酒が不味くなる!」
「だがのぅ。勇者よ。そなたは剣の強さも尋常ではないし、酒も強い。それに比べてわたしときたら……」
「飲めねぇよりはマシだが、おまえ酒入ると愚痴るタイプか、魔王?」
「は?」
単にいじけていただけの魔王は、心外だと反論する。
「酒は楽しくのむほうじゃ」
「なら、この先は愚痴や暗い話なしな」
「おぅ。わかった」
そして魔王と勇者の酒盛りは続いた。
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