第一章 魔王と勇者

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言って、勇者は酒瓶をひとつ取る。 そして、自らの服で簡単に汚れを拭き取ると、酒瓶の口にかじりつき、蓋を開けて飲みはじめた。 「豪快じゃのぅ」 魔王は呆気にとられながらも拍手を忘れない。 「魔王、おまえも飲めよ」 勇者は丁寧にも魔王の分の酒瓶の蓋を開けてやり、魔王に渡す。 「お、すまないのぅ」 受け取り、魔王は一口酒をあおるなり吹き出した。 「なんじゃこの度数は!」 「あ?」 勇者はご丁寧に酒瓶のラベルを見て、説明してくれる。 「毒サソリの酒みたいだなぁ。ちなみに俺のはスライムの酒だなぁ…そっちのほうがアルコール度数高けぇみたいだから、交換するか?」 「……よいのか?」 「あぁ、俺酒はそこそこ強いほうなんで」 「アルコールもか」 ずずーんと魔王の周囲が暗くなる。 「こら、魔王! 酒のんでる時に辛気くさくなるな! 酒が不味くなる!」 「だがのぅ。勇者よ。そなたは剣の強さも尋常ではないし、酒も強い。それに比べてわたしときたら……」 「飲めねぇよりはマシだが、おまえ酒入ると愚痴るタイプか、魔王?」 「は?」 単にいじけていただけの魔王は、心外だと反論する。 「酒は楽しくのむほうじゃ」 「なら、この先は愚痴や暗い話なしな」 「おぅ。わかった」 そして魔王と勇者の酒盛りは続いた。
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