第一章 魔王と勇者

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魔王と勇者の酒盛りは、続いていた。 魔王が持ってきた酒は多種多様で、いわゆるチャンポン飲みになった。 「お、今度はサボテンマンか普通だな。なんか別なのねぇのかよ?」 「あ?」 勇者の言葉に、魔王は床からひとつの瓶をとると投げた。 「ドンペリのプラチナじゃ」 「シャンパンかよ。もっと普通じゃないのないのかよぉ」 「ふふふ」 勇者の言葉に魔王の目がキラリと光った。 「これが飲めるものなら、飲んでみよ」 言って、魔王は勇者の前にひとつの酒瓶を置いた。 それを見て、さすがの勇者も怯んだ。 「げッ!! 大ゴキブリかよ」 「しかもムカデ入りじゃ」 貴重じゃぞと勝ち誇ったように言う魔王に、勇者はカチンときた。 アルコール度数は90度、ウオッカ並みである。 「飲めるか? 勇者よ」 「フン! 飲んでやろうじゃねぇか」 大ゴキブリ+ムカデ入り酒瓶をひったくると、一気に飲み干す。 魔王は慌てて勇者を気遣った。ここで倒れられでもしたら、いざプレイヤーがやる気を出しても、勇者が倒れていては無駄になる。 「勇者!」 無理するなという言葉は、勇者の意外な発言で終わった。 「なにコレ、めちゃくちゃ美味いんだけど」 「は?」 「これ追加ねぇの?」 「……」 上機嫌で言う勇者に、魔王は不貞腐れた。心配した自分が馬鹿みたいではないか……。 「秘蔵の一本じゃ。それしかない」 「あぁ! だったら早く言えよ! 一気飲みしちまったじゃねぇか!」 「わたしのせいか?」 「違うけどよぉ、もったいないことしたぁ」 「勇者よ。普通の酒は飲まんのか?」 「飲むぜ。どんどん出せ出せ魔王」 魔王はよいせと軽くふらつきながらも、酒蔵へと向かった。 意外に律儀な魔王である。
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