93人が本棚に入れています
本棚に追加
魔王と勇者の酒盛りは、続いていた。
魔王が持ってきた酒は多種多様で、いわゆるチャンポン飲みになった。
「お、今度はサボテンマンか普通だな。なんか別なのねぇのかよ?」
「あ?」
勇者の言葉に、魔王は床からひとつの瓶をとると投げた。
「ドンペリのプラチナじゃ」
「シャンパンかよ。もっと普通じゃないのないのかよぉ」
「ふふふ」
勇者の言葉に魔王の目がキラリと光った。
「これが飲めるものなら、飲んでみよ」
言って、魔王は勇者の前にひとつの酒瓶を置いた。
それを見て、さすがの勇者も怯んだ。
「げッ!! 大ゴキブリかよ」
「しかもムカデ入りじゃ」
貴重じゃぞと勝ち誇ったように言う魔王に、勇者はカチンときた。
アルコール度数は90度、ウオッカ並みである。
「飲めるか? 勇者よ」
「フン! 飲んでやろうじゃねぇか」
大ゴキブリ+ムカデ入り酒瓶をひったくると、一気に飲み干す。
魔王は慌てて勇者を気遣った。ここで倒れられでもしたら、いざプレイヤーがやる気を出しても、勇者が倒れていては無駄になる。
「勇者!」
無理するなという言葉は、勇者の意外な発言で終わった。
「なにコレ、めちゃくちゃ美味いんだけど」
「は?」
「これ追加ねぇの?」
「……」
上機嫌で言う勇者に、魔王は不貞腐れた。心配した自分が馬鹿みたいではないか……。
「秘蔵の一本じゃ。それしかない」
「あぁ! だったら早く言えよ! 一気飲みしちまったじゃねぇか!」
「わたしのせいか?」
「違うけどよぉ、もったいないことしたぁ」
「勇者よ。普通の酒は飲まんのか?」
「飲むぜ。どんどん出せ出せ魔王」
魔王はよいせと軽くふらつきながらも、酒蔵へと向かった。
意外に律儀な魔王である。
最初のコメントを投稿しよう!