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エリカがテーブルにつくと、 「Oh! Beautiful. It’s cute girl」 わざとらしい賞賛の声で迎えられる。 喜ばしいことなのだが、エリカにはわからない英語で会話されるのがムカついた。 ここは外国VIPが常連になるような高級クラブではないし、ついさっきまでアザミは日本語で会話していたはずだ。 それが急に英会話にするなんて、エリカへの嫌がらせとしか思えない。 でも確か、アザミだって英語は流暢じゃないはずだ。 そこは打ち合わせ済みなのか、アザミはタイミングの良い相槌をうちながら、接客をこなしている。 「Is that fashion of Japan?(あの格好は、日本で流行っているのかい?)」 「Yes, that's right.(ええ、そうなの)」 「I’t great.(イカれてる)」 アザミと客たちは大声で笑う。 話がわからないのは、エリカだけ。 つまりは、蚊帳の外なのはエリカだけだ。 困った日本人特有の、意味のない笑顔でやり過ごすのは簡単だが、それはなんだか負けた気がして、エリカは必死に英語を聞き取ろうとしていた。
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