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会話は、英語のわからないエリカを中心にしている。
外国人たちがエリカを指差して言った。
「Isn't she interested in an overseas life?(彼女は外国ぐらしに興味はないのかい?)」
「Yes! She has.(ええ、きっとあるはずよ)」
外国人の問いかけにアザミがにこやかに答えている。
そして、
「ねっ」
いきなりエリカに同意を求めてきた。
だが、エリカに答えられるわけがない。
意味がわからないのだ。
しかし、ここで『わからない』と告白することが悔しくて、エリカは思わず、適当にうなずこうとした。
ところが、
「It is not her intention.(それは彼女の意思ではない)」
いきなり、龍一が会話に割り込んできた。
それまで、近くにいた気配などまったく無かったのに、いきなり龍一の声がして、エリカはやっぱり飛び上がるほど驚く。
振り返れば、エリカの後ろに龍一が立っている。
心臓のためにも、真後ろに立つのは止めて欲しいと、エリカは龍一を見上げた。
「お待たせしました。新しいボトルです」
龍一は、まだ空になっていない酒の瓶をチラリと横目で見ながら、この店で一番高い酒瓶をシレッとテーブルの上に置く。
「なによ、頼んでないわ」
アザミは怒りを含んだ声で怒鳴ったが、
「大丈夫。売上げはアザミさんに付けておきます」
龍一は、その顔に魅惑の微笑みを浮かべて、サラリとかわす。
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