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その男はもう十分に酔っ払っていた。 エリカが、アザミのヘルプから立たされて、連れていかれた先は初めて来店した客のテーブルだった。 競馬か何かで大儲けしたのだろう。 金の使い方に慣れていなく、スマートさもない。 その上、 「女ってだけで商売できるんだから、いいよな」 「このリンゴ切って盛っただけでン万円なんだろ。お前ら楽な商売だぜ」 口が悪く、夜の店の遊び方も知らない。 そんな様子が嫌われて、店の女の子が付きたがらないのだ。 エリカだって、居心地の悪いアザミのテーブルから連れ出してもらったことは助かったけれど、 「今夜は、サイテーの夜だわ」 大げさに腕を広げて見せる。 イメクラで、客の質まで望むのは、贅沢なのだろうか。 恒例の八つ当たりで龍一の美しい顔を睨めば、龍一は、外国人みたいな様になった仕草で肩をすくめた。
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