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3
その男はもう十分に酔っ払っていた。
エリカが、アザミのヘルプから立たされて、連れていかれた先は初めて来店した客のテーブルだった。
競馬か何かで大儲けしたのだろう。
金の使い方に慣れていなく、スマートさもない。
その上、
「女ってだけで商売できるんだから、いいよな」
「このリンゴ切って盛っただけでン万円なんだろ。お前ら楽な商売だぜ」
口が悪く、夜の店の遊び方も知らない。
そんな様子が嫌われて、店の女の子が付きたがらないのだ。
エリカだって、居心地の悪いアザミのテーブルから連れ出してもらったことは助かったけれど、
「今夜は、サイテーの夜だわ」
大げさに腕を広げて見せる。
イメクラで、客の質まで望むのは、贅沢なのだろうか。
恒例の八つ当たりで龍一の美しい顔を睨めば、龍一は、外国人みたいな様になった仕草で肩をすくめた。
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