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龍一は、最初の課題として、毎日30回の腹筋ノルマをエリカに課した。 それも自宅で、ではなく、龍一の見ている前で、姿勢も体の起こし方も『完璧』な腹筋を30回だ。 「足は膝を立てて肩幅だ。そんなに大っぴろげるな」 だの。 「顎だけ突き出しても無効だ。腹筋のどこに力が入ってるのか意識しろ。それもわからないほどゆるんでるのか」 だの。 ちょっと他にないほど美しい顔立ちの唇から、飛び出す言葉は果てしなく辛辣。 だからドSキャラなのかと思えば、 「お前は女王さまより、プリキュア路線なんだ。ジコチューと戦うんだぞ。その自覚が大事だ」 いきなり、ものすごいオタク発言でエリカを驚かせる。 「いいか、変身する際には、客の手のひらにL・O・V・Eと書く」 「……」  ……それはスゴイ。 エリカは思わず絶句する。 ある意味最強の接客だとは思うが、そんなシチュエーション、想像するだけで、こめかみから汗が伝う。  ――恥ずかしい。 何もかもが恥ずかしいが、何より、真顔で発言する龍一の存在が恥ずかしい。 しかし龍一の顔は、あくまでも真剣。 「お前は今日からキュアハートだ。いいな」  ――いや、良くないです。 このイケメン。 究極ドSのくせに、超オタクキャラまでオマケにくっついてきた。 これまで出会ったことのない、この龍一という『変態』キャラクターを、エリカはまじまじと見つめてしまった。
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