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高広は、タバコのフィルターを噛みながら、
「まあでも、あの良平坊ちゃんは、これから大変だろうな。帰ったところで、すぐに父親の死を知らされるだろうし。三男坊じゃ組の跡目とかめんどくさそうだ」
タクシーに乗せる直前まで、結城晴朝の埋蔵金が無いことを嘆き、
「俺は不幸だ。まったく貧乏くじだ。この世の誰よりツイてねぇよ」
泣き言を繰り返していた良平だが、さすがに男の涙はうっとおしく思ったのか、龍一がウイスキーをひと瓶おごっていた。
タクシーの後部座席でそれをラッパ飲みしている良平の姿が、龍一の車からでも見えるのだが、日本に帰れば酒に酔うどころの話ではなくなるだろう。
高広は、
「呑気にクダ巻いてられるのも今のうちってか。龍一、あんたが出張ってるってことは、佐々部の後継ぎは、あの良平坊ちゃんに決まりなんだろう」
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