若頭と帝王 1

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ホノルル国際空港の個人用出口を抜けた到着ロビーは、一種、異様な雰囲気が漂っていた。 ホノルル空港のあるハワイ、オアフ島といえば常夏の島。 ましてや6月といえば、日陰でも気温29度から31度。 間違いなく夏である。 そこに黒ずくめの異様な集団が待ち構えている。 日本と違って湿度はないから過ごしやすいが、かといって黒服の団体は見ているだけで暑苦しい。 いや、暑いを通り越して、葬式中の集団を見るような、ただただ不気味で剣呑な風景だ。 観光目的にこの地に立った客たちは、その集団から目をそらすように顔を背け、足早に到着ロビーから立ち去っていく。 そんな集団の中に、ひとりの報告係が血相を変えて駆け戻ってきた。 「いらっしゃいました。間違いありません」 この報告係、空港の税関検査の前で、目的の人物の到着を待っていたのだ。
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