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龍一は、 「まだ確定ではないが、そうなるように、強力にプッシュはするだろうな」 あっさりと、『政府は』という主語を抜きながらも、高広の指摘を認めた。 つまりそれは、日本最大の広域指定暴力団と位置付けられている佐々部組だが、跡目争いに口を出せるほど、政府とは太いパイプで繋がっていることを意味している。 政府の手は、日本のヤクザという社会の闇部にまで、きっちりと及んでいるのだ。 でなければ最初から、政府の『元』工作員の有坂龍一が、ヤクザの子息の誘拐事件でハワイくんだりまで派遣されるわけがない。 政府は、日本の闇社会の暴力団全体を、その裏側からコントロールしようとしている。 加えて今回の件で、龍一によって助け出された佐々部良平が佐々部組の跡目を継ぐことにでもなれば、政府と暴力団の結びつきは、より強固なものとなるだろう。 闇社会も日本政府も、この国が善と悪の微妙なバランスの上にあることを望み、誰も完全な正義や悪が支配する社会など夢想していない。 全員が持ちつもたれつ、ウィンウィンの関係を探っている。 高広も綺麗ごとは嫌いだから、その思想は理解できるが、ただ虫が好かない気に食わない。 今回だって誘ったのが龍一でなければ、誰に求められようと鼻で笑って拒否していたところだ。
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