150人が本棚に入れています
本棚に追加
意に沿わぬ労力を使わされた高広だが、
権力のある佐々部組の三男坊に生まれて、社会の仕組みも現実も教えられず、目の前にぶら下がった己の不運を単純に嘆く佐々部良平の姿には、
多少、憐憫の情を覚えている。
無知は罪だ。
だから龍一も良平にひとときの慰めにアルコールを与えながら、
「お前が絶望を知るのは、これからだ」
同情していたのかと思っていたのだが。
運転する龍一を盗み見やれば、端正な顔に、これまた人間離れした美しい微笑みを浮かべている。
「……」
龍一は、その頭で考えていることと、顔に浮かべる表情が違う。
誰もが魅了される魅惑の微笑みを浮かべながら、特技は『拷問だ』とほざける男だ。
果たして今も、その頭の中で何を考えているのやら……。
高広は軽く身震いしてから、タバコの火をもみ消した。
最初のコメントを投稿しよう!