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「……」
高広は呆然と、龍一を見つめている。
そして、
「なに? あの三文芝居」
龍一がメンバーたちの前で、まんまと佐々部組若頭の役を演じ抜いたことを言っている。
しかし龍一は、何を今さらと無表情のまま、
「最初から茶番劇だと言っているだろう」
高広に答えた。
高広は、
「だってよ、あの額に風穴あけた御仁だって、最初から龍一、あんたの手先だったじゃねーか」
そう、胸ポケットに仕込んだ血ノリを破裂させたり、大げさに撃たれたフリで倒れて見せるのは、良平から少し距離があれば、割とたやすいことだ。
でも良平の目の前で、龍一の発砲のタイミングに合わせて頭に風穴を開けてみせるなんて演技は、事前の十分な打ち合わせと準備がなければ不可能だ。
良平の目の前で、良平に最初にインパクトを与えるためにそれをやってのけた男。
今、メンバーを率いて、この部屋を出て行った男。
そいつはもちろん、政府から送り込まれていた龍一の同業者だ。
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