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「はじめ君は、翔太くんの自転車に乗り駅へ行った。それから、わざと目立たぬ場所へ自転車を隠すように置いておく。……今度は走って家へ戻ってきて、警察へ連絡するのを始発の電車が動く時間まで待った」
「……あ」
「始発は四時半くらい。電車が走り初めてからなら警察はまず、各駅を重点的に探す。同時に防犯カメラもチェックするよね。相手は未成年。行動範囲だって限られる。そんなに遠くは行けない」
翔太くんがはじめ君をもう一度見上げた。目がまん丸になっている。
「兄ちゃん……そうだったの?」
「お前を一人にした俺が悪かった。だから……絶対に警察より先に、お前を見つけたかったんだ」
そう言ったはじめ君の口調には、悔しさが滲んでいた。
「お前を見つけて、二人で警察へ出頭して事情を話せば、きっと、正当防衛になるって思ったから……」
「に、兄ちゃん」
翔太くんの目が涙で真っ赤になった。そして、怒ったように言った。
「僕、兄ちゃんがやったと思った。なのに、警察に僕が刺した。って……そう言ったから……誰も信じられなくて、怖くて逃げたんだ」
「うん。ごめんな? 兄ちゃんの早とちりだよな」
翔太くんの頭を撫でながらはじめ君が謝る。
抱き合う兄弟に微笑ましい気分になりながら、まだ、これで解決したわけではないと思い直した。
「翔太くん詳しく教えてくれる? どうしてあの晩、外にいたのか」
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