第一章 プロローグ

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 ミーコを抱っこしたままでは、けもの道を下るのはさすがに怖い。朝露でサンダルが滑るかもしれないしね。  ということで、今度は正式ルートの石階段を降りて、家へ続く道を戻った。すると遠くからけたたましいサイレンの音が聴こえてくる。  ん? 救急車? パトカー?    その音はどんどん近くなって、わりと家のすぐ近くで止んだ。 「え? 近所でなんかあった?」  ミーコを抱っこしたまま音が止んだ方へ向かう。近所のおじいちゃんやおばちゃんも、何事かとわらわら出てきた。 「あれ? まーくん? 久しぶり~!」 「あ、咲ちゃん?」  近所に住む、中学の時の同級生まで現れた。って、あれ? 結婚して大阪かどっかに行ったんじゃなかったっけ? 「久しぶりだね~。あ、里帰りとか?」 「ううん。戻ってきたのよ」 「なんで?」 「な、なんでって……離婚したからよ」 「え? なんで?」 「いいでしょー。別に。話せば長くなるからめんどくさい!」 「え~?」  「めんどくさい!」なんて、サバサバした口調は昔と変わんないなぁ。そのくせ両手で顔を半分隠すみたいに喋っているのが妙におかしかった。 「ねぇねぇ、なんで顔隠してんの?」 「う、うるさいわね! まだノーメイクなの!」 「いいじゃん! 別に。おじいちゃんとおばちゃんしかいないよ?」 「そ、そういう問題じゃないの!」 「だいじょーぶ! だいじょーぶ! 咲ちゃん美人さんだし、すっぴんでも可愛いってば!」 「……え? ほんと……?」 「冗談。冗談。で、子供は? いるの?」 「なによそれ! ……いるわよ! 元気なのが一匹!」 「おいおい……、一匹って。で、なんで怒ってんの?」 「うるさい!」  顔を隠すのをやめて、ずんずん前を歩いて行ってしまう咲ちゃん。  なんだ。なんだ。なんでいきなり怒ってんの? まったく……女の人って直ぐに気分がコロコロ変わるんだよなー。よくわかんないや。
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