第一章 プロローグ

7/7
695人が本棚に入れています
本棚に追加
/248ページ
   毎日、七時頃店じまいをしていると、部活で遅くなったのか、学校帰りの翔太くんをよく見かけた。  いつも数人の友達とお喋りしながら歩いていた。  たまに店でジュースなんかも買ってくれた。でもそれも、思い返せば去年の記憶なのかもしれない。  俺が「こんばんは! 気をつけてね!」と声を掛けると、翔太くんは頭をペコリと下げて礼儀正しい挨拶を返してくれた。  春先だったかな? 四月だっけ? 翔太くんを見掛けた記憶もあるんだけど。  あの時の翔太くんは、一人でとぼとぼ歩いていた。  俯き、落とした肩に、俺は声を掛けるのを躊躇った。  あの後ろ姿が、ふと思い出された。
/248ページ

最初のコメントを投稿しよう!