第1章

10/11
前へ
/36ページ
次へ
「猫、名前は……?」 「……トト」 「トト?」   私が首を傾げると、 私の鞄に下がってるマスコットを篠原さんは指さした。 ……もしかして、これから? このマスコットはお気に入りで、 同じのが学校用の鞄にもぶら下がってるから。 「トトにおやつ、あげてもいいですか?」 「……」   無言で篠原さんが頷く。 買ってきたおやつをあげると、トトは喜んで食べていた。 あの雨の日からは信じられないくらい元気で、 よかったなーって思う。 きっと、篠原さんも可愛がっているんだろうってことが うかがえるし。 私がトトと遊んでいる間、篠原さんは終始無言だった。 けど、顔はなんだか優しそうに笑ってて。 無駄に私の胸をドキドキさせた。 「……電車?」   気が付いたらもう夕方になっていた。 トトと篠原さんが醸し出す空気はなんだか優しくて、 ずっといたいとか思ってしまう。 「はい」 「……駅まで送る」
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

69人が本棚に入れています
本棚に追加