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「……あ」
雨の帰り道。
道ばたに事故に遭ったのか、怪我をした猫を見つけた。
……どうしよう。病院?
あ、でも、今月お小遣いピンチで。
あとから払うとかできるのかな。
とりあえずしゃがんで傘を差し掛けたものの、
悩んでいる間も猫は弱っていく。
……早くしないと、死んじゃうかも。
でも、どうしたら。
「……猫」
突然降ってきた低い声に見上げると、
サラリーマン風の若い男の人が立っていた。
その人は私の隣にしゃがむと、
服が汚れることなどかまわずに猫を抱き上げる。
「……あの」
一歩、踏み出していたその人が私の声に振り返った。
一瞬、視線が合うと短く頷き、
黙って私の手を掴んで走り出す。
……自分の傘が落ちて、濡れることなどおかまいなしに。
猫と一緒に連れてこられたとことは、
当たり前といえばそうだけど動物病院だった。
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