第1章

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「……あ」   雨の帰り道。 道ばたに事故に遭ったのか、怪我をした猫を見つけた。 ……どうしよう。病院? あ、でも、今月お小遣いピンチで。 あとから払うとかできるのかな。 とりあえずしゃがんで傘を差し掛けたものの、 悩んでいる間も猫は弱っていく。 ……早くしないと、死んじゃうかも。 でも、どうしたら。 「……猫」   突然降ってきた低い声に見上げると、 サラリーマン風の若い男の人が立っていた。 その人は私の隣にしゃがむと、 服が汚れることなどかまわずに猫を抱き上げる。 「……あの」   一歩、踏み出していたその人が私の声に振り返った。 一瞬、視線が合うと短く頷き、 黙って私の手を掴んで走り出す。 ……自分の傘が落ちて、濡れることなどおかまいなしに。   猫と一緒に連れてこられたとことは、 当たり前といえばそうだけど動物病院だった。
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