第1章

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振り返ったその人の首が、不思議そうに傾く。 自分でも、なんで呼び止めたのかわからない。 「その、……猫、会いに行ってもいいですか?」   じっと見つめる、茶色がちなまっすぐな瞳。 なぜか、きれいな目だなとか思ってた。 「……連絡先。土日は休み」   ポケットから出したなにかにペンを走らせると、 その人はそれを私に差し出してきた。 受け取るとそれは、名刺だった。 「わ、私の連絡先、は」 「……いい。急いでる」   携帯をだそうとわたわたしている私に、 それだけをいうとその人は去って行ってしまった。 渡された名刺を見る。 “篠原拓篤 Takuma Shinohara” 会社名とともにそう、書いてあった。   その夜。 名刺を片手に悩んでた。 ……なんて電話したらいいだろう。 猫に会いたいから。 それでいいんだよね。
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