第1章

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中に入るとあの日の猫が元気に篠原さんの足にすり寄った。 「ほんとに元気になったんだ……」   猫はずっと、篠原さんの足にまとわりついている。 よっぽど気に入られているみたいだ。 「あ、これ。よかったら」 「……」 無言で、差し出したケーキの箱を篠原さんは受け取った。 ……あ。もしかして、甘いもの嫌いとか? だったらどうしよう。 「……座ってて」   いわれた通り床に座り、 物珍しそうに寄ってきた猫と遊びながら、 キッチンへ行った篠原さんの様子をうかがう。 そのうちいい匂いがしてきて コーヒーを淹れてるんだってわかった。 「……」   目の前に置かれたのは、 コーヒーとお皿に載せられた、買ってきたケーキ。 フォークを握ると篠原さんは黙々と食べ始めた。 ……これはコーヒーをだしてくれたということで、 いいのかな。
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