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そんな希望が目の前で崩される。偶然、まだ外形を保っていた建物が崩れて道を塞いでしまった。後数刻、崩れるのが遅ければうまく奴らから道を隔離できたというのに。
--仕方ない。
右手を突き出す。手の甲には複雑、かつ緻密な紋章が描かれている。精霊紋、と呼ばれるそれらは異界に住む精霊と契約をした証。僕のこの紋章もそれのひとつだ。契約した相手は火の精霊、レンファ。それほど力は最下位、と言っていい程の精霊だが火の間に通り道を作ることくらいなら出来るはずだ。
その願いは通じ、まだ体の小さい僕ならギリギリ通れる道が出来た。熱風にさらされながらその間を通り抜ける。
「--ほう、餓鬼一匹まだしぶとく生きていたが」
その直後に背後からそんな声が聞こえてきた。思わず身を固くしてしまう。
灰色のローブを纏った長身の狂人が跳ぶ。それだけで塞がれた火の壁を跳び越えてきた。それを認識した僕は全速力で森へと走ったが、その前に襟を掴まれ宙に持ち上げられてしまう。
「は、離せ化け物!」
必死に両手両足をバタつかせる、がそれが当たっても狂人はビクともしない。それどころか逆に僕の手足が反動で痛くなっていった。
「威勢のいい餓鬼だ」
狂人が嗤う。それを認識した僕は恐怖のあまり視界が歪む。とっさにレンファを呼び出して攻撃したが、それですら意味をなさなかった。
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