第1章 消えない傷

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第1章 消えない傷

街が燃える。僕はそんな街の中を命からがら走り抜ける。追手は、ない。が、安心は出来ない。この街の住人、というだけですべてを人々を殺してしまったあの狂った人間たちはどこにいるのかわからないのだから。 「なんで、こんなことに………!」 視界が涙で歪む。それでも足を止めない。奴らは何が目的で、なんのためにこんな非人道的なことをしてるのか、そんなことですらわからない。急に現れ、急にすべてを壊し始めた。僕の父さんも母さんも、妹も奴らの手によって消された。近所の小父さんや小母さんも消された。仲の良い友達ですら。全て、すべて消されてしまった。 「ちくしょう、ちくしょう………!」 口から洩れるのはそんな言葉ばかり。周囲を気にしながら走っているので漏らす言葉自体は小さいが。大気が渦巻く音で自分の耳にすら届かない。 周りに炎以外の動くものは存在しない。人はもう全員燃え尽きてしまったのか、気配すら感じられない。建物もあらかた燃え尽きてしまった。生き残っているのは奴ら以外自分だけなのか、そんな考えすらこみあがってくる。必死に否定したが。 街の端が見えてくる。そこから先は少しの広間と共に森が広がっている。その中に逃げ込めば奴らから逃げ切れる、そんな幻想を胸に抱きながら足を速める。
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