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僕たちは、同時に足を前に踏み出す。
そして僕たちを隔つものは、花の植え込みだけとなる。
ゆっくりと手を伸ばした段階で、気がつき、
咄嗟に手を引っ込め、後退りする。
どこへ行くの
顔無しの少年はそう言った。
僕と全く同じ格好をして、そう言った。
合わせ鏡のように、
二人同じ角度の、手と足。
まるでこの庭の象徴的なオブジェにでもなった気分になる。
この夢の気味が悪いのは、自分がその少年を愛していることだ。
とても深く、果てのない海のように。
__誰だか知りもしないのに?
そんな疑問が渦のように僕を悩ませる。
本当に?
一体 その彼の言葉に、
何度はっとさせられたろう。
彼の声が静寂の庭に響くのだ。
その声が、一つの選択の誤りも許さないと告げてくるようで、
何故か心が泣いたようにかなしくなる。
本当に、忘れてしまったの?
少年の声が途端に涙を含んだ。
僕もその瞬間、
心が溢れ返るのを感じるのだ。
泣きたくなって、
同時に何かに怒りを感じる。
いつもここで、
夢は終わる。
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