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__既視感。
彼が泣くと落ち着かない。
それが、僕の所為で泣いているなら尚更。
まるで、あの夢の僕たちみたいだと感じた。
きっとこの時の僕は、
熱でどうかしていた。
「……分かった」
__……あれ?
「__本当に?」
荒野は涙に濡れた目を見開いて、
僕に身を乗り出すように見つめた。
それでも
触れてくる訳では無い。
じいちゃんも突然の事に目を瞬かせている。
僕がとりあえず了承したのが余程
意外だったらしい。
自分でも、どうしてこんな事を言ったのか説明が付かない。
「………」
今きっと僕は、
苦虫を噛み潰したみたいな顔をしているに違いない。
目を閉じると、
自然と目裏にあの光景が浮かんでくる。
エメラルドブルーの蝶が飛ぶ、あの夏の庭を。
清々しい、水と土の混じった におい。
__多分僕は、
…………この目に弱い。
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