おにいちゃん

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お兄ちゃんは蘇ったのだけど、相変わらず肉体は腐ったままで 歩くたびに臭気を撒き散らし、やはり吐き気を抑えられない。 お兄ちゃんが蘇って3日目の夜、私はうっかり自分の部屋の鍵を掛け忘れ 勉強していたら、いきなり腐臭が漂ってきて、振り返ったら お兄ちゃんが立っていた。私はまだその容姿に慣れておらず 心臓が止まりそうなほど驚いた。 お兄ちゃんとは言え、見た目はゾンビ、リアルゾンビなのだから。 「そんなに驚くなよ。俺だってこんな姿になんてなりたくなかったのだから。」 そう言われ、私は、お兄ちゃんに悪いと思った。 「ごめんね。どうしたの、お兄ちゃん?」  「久しぶりに勉強でも教えてやろうか?」 そう言いながら私に近づいてきた。 やはり臭いは強烈で、吐き気がした。 なんとか耐えて、勉強を教えてもらうことにした。 私がノートに向かうと、机の上に腐敗したお兄ちゃんの手が乗って、 お兄ちゃんは、私の耳元でこう囁いたのだ。 「お前、うまそうだな。」 私は驚いてお兄ちゃんの顔を見た。 黄ばんだ歯が、腐った唇の隙間から覗いた。 笑ったのか? これは、お兄ちゃんではない! お兄ちゃんのぬるりとした手が私の手を掴んだ。 私は、今まで出したことの無いような悲鳴をあげた。 強く引っ張って抗うと、お兄ちゃんの手のひらの皮がずるりと剥けて、私の腕に張り付いていた。 「いやっ、いやぁあぁぁ!」 私はお兄ちゃんを力いっぱい部屋の外に突き飛ばした。 すぐに、鍵を掛けて部屋に閉じこもった。 何が蘇ったのか。 おぞましい何か。 お兄ちゃんの皮を被った何かがドアを叩く。 ほぼ肉体が腐っている手でドアを叩くから、 叩く度に湿った物がぶつかるような嫌な音がする。 私はおぞましさに耳を塞いだ。 びちゃびちゃびちゃ。 「急にどうしたんだよぉ。開けろよー。」 声が半分笑っている。 助けて。母に助けを求めようとしたが、 あの正気ではない目を思い出してしまい諦めた。 きっとふざけあってるとしか思わない。 「なあに?騒々しい。ご近所めいわくでしょう?」 お母さんが大声で注意する声がした。 「お母さん!ダメ!」 私が叫んだ時には、もうお母さんの悲鳴が響いていた。 「お母さん!」 私は思わず、ドアをあけてしまった。 そこで私は信じられないものを目にする。
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