16人が本棚に入れています
本棚に追加
子供は一姫二太郎、二人作る予定だった。
子供が小学生になるころには家を建てて、
ささやかな庭に花を植えたり、
子供が拾ってきた犬を、仕方ないなぁと飼うことを許したり、
子供の成長を見守り、一生君の笑顔を守りたかった。
俺も自分の棺にすがり付き号泣した。
もっと生きたい!
こんな悔いを残して死にたくなんてなかった。
俺はお前ともっともっと同じ時間を過ごすはずだった。
ずっとお前と一緒の時間を過ごしたい。
死ぬのなんて嫌だ!
棺にすがり付いて泣いている妻の肩を、俺の弟が抱いている。
おい、ちょっと。離れろよ。
俺の妻だぞ!
どさくさに紛れて、何触っちゃってんの?お前。
やめろよ、俺の名前呼んでんじゃん。くっつくなって。
離れろよ、バカ。
俺が弟に嫉妬してヤキモキしていると、後ろから肩を叩かれた。
誰?じいさん。
ていうか、魂の俺の肩なんて叩ける奴いないのに。
「お取り込み中申し訳ありませんが、そろそろお時間なので。」
ジジイのお迎えかよ。
「嫌だ、俺は死にたくないんだよ!このままじゃ死んでも死にきれねえよ。
この世に未練がありまくりだよ。なんとかならないの?」
じいさんは困り顔で
「無茶言わないでください。」
と言った。俺は号泣しながら懇願した。
「お願いだよ。俺は新婚なんだよ?もっと妻と同じ時間を過ごしたかった。あいつと離れるなんて嫌だよ!幽霊になってでも、あいつの側に居たいんだ!あいつを守りたいんだよ。」
じいさんは試案顔になった。
「そう言われましても。」
俺はさんざん一緒に行くことを拒んだ。
「仕方ありませんね。」
「じゃあ、逝かなくてもいいんだな?」
じいさんは曖昧な笑顔を俺に向けた。そして、じいさんは俺の前で合掌をした。
俺が足元から分子単位に分散していく。
おい、じいさん、返事を聞かせろよ。俺の意思はまるで無視かよ。
本当にこんな不条理があっていいのかよ。
俺の意識も分散して行った。
最初のコメントを投稿しよう!