お葬式

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子供は一姫二太郎、二人作る予定だった。 子供が小学生になるころには家を建てて、 ささやかな庭に花を植えたり、 子供が拾ってきた犬を、仕方ないなぁと飼うことを許したり、 子供の成長を見守り、一生君の笑顔を守りたかった。 俺も自分の棺にすがり付き号泣した。 もっと生きたい! こんな悔いを残して死にたくなんてなかった。 俺はお前ともっともっと同じ時間を過ごすはずだった。 ずっとお前と一緒の時間を過ごしたい。 死ぬのなんて嫌だ! 棺にすがり付いて泣いている妻の肩を、俺の弟が抱いている。 おい、ちょっと。離れろよ。 俺の妻だぞ! どさくさに紛れて、何触っちゃってんの?お前。 やめろよ、俺の名前呼んでんじゃん。くっつくなって。 離れろよ、バカ。 俺が弟に嫉妬してヤキモキしていると、後ろから肩を叩かれた。 誰?じいさん。 ていうか、魂の俺の肩なんて叩ける奴いないのに。 「お取り込み中申し訳ありませんが、そろそろお時間なので。」 ジジイのお迎えかよ。 「嫌だ、俺は死にたくないんだよ!このままじゃ死んでも死にきれねえよ。 この世に未練がありまくりだよ。なんとかならないの?」 じいさんは困り顔で 「無茶言わないでください。」 と言った。俺は号泣しながら懇願した。 「お願いだよ。俺は新婚なんだよ?もっと妻と同じ時間を過ごしたかった。あいつと離れるなんて嫌だよ!幽霊になってでも、あいつの側に居たいんだ!あいつを守りたいんだよ。」 じいさんは試案顔になった。 「そう言われましても。」 俺はさんざん一緒に行くことを拒んだ。 「仕方ありませんね。」 「じゃあ、逝かなくてもいいんだな?」 じいさんは曖昧な笑顔を俺に向けた。そして、じいさんは俺の前で合掌をした。 俺が足元から分子単位に分散していく。 おい、じいさん、返事を聞かせろよ。俺の意思はまるで無視かよ。 本当にこんな不条理があっていいのかよ。 俺の意識も分散して行った。
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