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走り去る後ろ姿に茫然と立ち竦み、我に返ると駆け出した。
先程の出来事が現実に侵食しはじめ、早く捕まえなければ間に合わないと焦りが突き動かす。
『……ごめんなさい。言っちゃいけないの分かっていたのに。』
……彼女と別れた。
どうしても気持ちがすれ違い、修正できぬまま、お互いが別に想う相手を見付けてしまう。
まだ到底言える状況にないと別れたことも気持ちも隠した。
突然ただの同僚に見えなくなってしまったのは、些細な事が切欠。
渡した資料の1枚がハラリと落ち、拾う彼女の後頭部に視線が向いた。
さらさらと滑り落ちる髪の毛の間に見えた白いうなじが焼き付いて離れない。
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