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その時はそれきり。
変わらぬ態度は、どう向き合うか探っていたから。
関係を変えるには近すぎる。
女を意識した事もない、やたらと気の合う同期でライバル。
営業成績を競い合い出して2年。
気が強く、俺には弱味など見せない。
22時。
気になる仕事を思いだし、帰りかけて戻った俺が見たのは、俺の席に座った彼女の後ろ姿。
他のやつらは帰ったのだろう。
半分以上消された灯りに、その姿だけ浮かんだように見えた。
ゆっくり振り返った彼女の目が大きくなり、慌てて立ち上がった。
「何か探し物?」
資料でも探しているのかと思った。嬉しさを隠し近づくと何もないデスク。
「何してたの?」
ため息をひとつ。
深呼吸をひとつ。
諦めた様にまた、ため息をついて俯く。
普段の彼女から想像つかぬほど弱々しく、消えそうな声。
「ずっと好きだったの。」
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