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世の中は不公平だ。
どんなに頑張っても報われない者もいれば、たいして頑張らずとも幸せを掴む者もいる。
前者は私、後者は同僚のリナ。
ダイエットにエステ、クッキング教室。美容室には頻繁に通い、流行をしっかりとファッションに取り入れて女子力を磨いている…はずの私は、目下、彼氏いない歴七年。
仕事もお洒落もテキトー、酷いときは寝癖髪にノーメイクで出社するときもあるリナの彼氏は、容姿端麗、文武両道、温厚篤実、将来有望の超優良物件、京極物産の御曹司だ。
「もうさぁ、ユキッちがご飯食べに行こうとか買い物行こうとかうるさくてさぁ、イベント進まないよぉ」
ランチを食べながらリナがスマホ片手に愚痴を言う。
彼女の言うイベントとはゲームの話、ユキッちとは御曹司のこと。
「あんたねー、いい加減にしないと捨てられるよー」
同僚のミノリが呆れたように忠告するも、当のリナは「エヘヘ、大丈夫。ユキッちはリナにマジ惚れだもん」と、のろける始末。
私は、顔では笑いながらも、この不公平な所業に神を呪った。
ある日、お風呂からあがった私は、マジマジと鏡を覗きこんだ。
「何が足りないんだろ…リナはあんなに素敵な彼がいるのに」
ため息。
自分で言うのも何だが、それなりにかわいい方だと思う。ボディラインだって決して悪くない。
大学時代の男友達に言わせると「かわいいけど色気がないタイプ」だそうだ。色気ってなんだ!?
「あー、もうヤダ」
何だか気が滅入って、そのままゴロリと仰向けに寝転ぶ。
視界に拡がる真っ白な天井。
「!?」
その片隅に見慣れないものが在った。
「何あれ?」
私は目を凝らして見た。
「御札…?」
なぜか気になって、部屋中を見回る。すると、クロゼットの中、キッチンの戸棚の奥、トイレのタンクの裏…見つかりにくい場所に何枚も何枚も御札が貼ってあった。
「何よ、これ…」
ここに引っ越して七年。思い返せば、人生が空回りしだしたのはそれからだ。
「これの…せい?」
私は迷いながら御札を剥がした。これで変わるかも。そんな淡い期待とともに。
私にもリナのような素敵な彼が現れるかも…しかし、現れたのは、素敵な彼ではなかった。
「忌々しき悪霊封じの札…よくやったぞ、愚かでかわいい女よ」
黒い影、緋色の瞳、禍々しき気配…影は私を包み込み…
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