第1章

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「今日一時から面接でお時間いただいた、狩谷七海と申します。」 さっきのご老人のノリで思わず大きな声で言ってしまった。 「そんなに大きな声で言わなくとも聞こえてるよ!ハマー、案内して!」 と呼ぶと、ここには場違いのサングラスの大男が立ち上がった。 ひっ! おもわず声が出そうになったがこらえた。会社はあるようね。てっきりペーパーカンパニーの類かと思った。 「ついてきな・・・」 大男は低音で重量感のある声でそう言った。 「もう少し愛想よくできないかしら・・・」 部屋で待たされた。会議室のようだ。壁にはボア駆除のイメージポスターが貼ってある。 「あなたは狙われている!危険を察知したらご連絡を!」 ポスターはさわやかなイメージだが、何を駆除するのか分からない。ボアってなに?英語? 「ストーカーかしら?」 イメージを探しているうちにノックが聞こえた。入ってきたのは黒いスーツに黒いネクタイ、サングラスの男たちだ。女性もいる。映画であったよね。UMAをハンティングするエージェントってこんな感じだったな。 (うそでしょ?) 見れば見るほど映画のような世界だ。合計5人だ。さっきの青年もいる。さっきのマッチョと女性が一人だ。女性まで黒ずくめのスーツだ。いやだ。そういえば私も・・・。エージェントという風情だ。中央のおじいさん?あれ?さっきの受付の人かな?じりじろ、七海は顔を見る。 「君が今度の応募者だな。名は狩谷七海。契約社員を希望、と。」 社長らしき人物はさっきと違って重みがある。あのしょぼそうなおじいさんがボスなの? 「この業界の特色だが、採否を先に伝える。健康な人なら誰でも歓迎だ。従って君は採用だ!」 「ちょっと待ってください!私のこと何も言ってませんけど。それに仕事内容も聞いてないし・・・」 「今日、只今をもってボア駆除の社員になったんだ。業務の説明を聞いてもらいたい。」 先ほどの青年が機械のように言う。 「それは私が決めることでしょ?」 「だって聞いたら誰もやり手がいなくなるじゃん・・・。」 長老は本来の弱気な言い方をする。 「だが、厚労省は君を必要としているのだ!」 「何が厚労省よ!全然分かんない。一体なんなの?説明して。」 皆が顔を合わせた。社長は続ける。 「今、社会は脅かされているのだ。」
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