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『・・・テラ。・・・まだ、・・・そこに居るか?』
そう呼んだ後、息を深く吐き出したセンティネルに、テラはブルリと身体をゆすると慌てて彼の傍へにじり寄った。
『…』
掛ける言葉が見つからなかった。
テラもまたとうにそれに気づいていた。
もはや、センティネルに明日は来ない。
もう明日からは、彼と話をし、共に空を駆け、未来へと進むことは叶わないのだ。
と。
『約束してくれ…何があってもルーナを護ると。お前の命を賭してでも…』
『わかってる。きっとそうする。…だってあんたが教えてくれたんだ。』
『あの子はいい娘だ。…きっと、お前にとって、そうする価値がある。』
テラはわざとそうする様に、明るい声で答えた。
『そうさ。…あんたにとっての、エリックと同じだ』
センティネルは苦しげに大きく息を吸い上げたが、表情は至極穏やかだった。
『・・・そう。…エリックは…俺の、最高の…相棒だ。それから、…』
取り囲み二匹の竜の話を聞き入る人々から、啜り泣きが漏れ出した。
別れを惜しむかのように黄昏色に染まり始めた海の向こうに、大きなオレンジ色の太陽が夢のように浮かんでいるのを、センティネルは少しだけ首を擡げ見た。
そして再びその薄い瞳をテラへと戻し、センティネルは言った。
『頼む。・・・レディに…ありがとうと、…』
そこまで呟いたセンティネルが、再び深い息をついた。
そして首を横たえたセンティネルの黄金色の瞳は、水平線の向こうへ太陽が沈むかのようにゆっくりと暗い瞼の奥へと吸い込まれ、
やがて光を失った。
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