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ルーナはそっと踵を返し、足音を立てぬようドアの方へと歩くと、ノブに手を掛けた。
「…もう行っちゃうのかい?ルーナちゃん」
背中に投げられた掠れ声に、ルーナは慌てて振り返った。
身体はソファに横たえたまま首だけをもたげ、ブルーグレイの瞳を寝起きとは思えぬほどにパッチリと見開き、こちらを見るマックスがそこにいた。
「あっ…、お、起こしちゃった?」
「…起きてたよ?少し前からね」
しれっと答えると、マックスは上半身を起こし長い腕を突き上げ欠伸をした。
「…ごめんなさい、それに、あの…ベッド…」
「いいんだ。深酒させた俺にも責任あるし」
でも、と申し訳なさそうに項垂れ目を泳がせているルーナに、マックスはクスリと笑うと、
「…そんなに申し訳ないって思ってくれるなら、キスのひとつでもくれるかい?」
「ええっ!?」
狼狽に声を裏返らせたルーナに、マックスは想像通りだといわんばかりに破顔し笑った。
「ジョーダンだって!…っと可愛いなあ。俺の言う事何でも真に受けるんだから」
マックスのこういう艶っぽい冗談はどうも苦手だ、と、ルーナは顔を顰めた。
マックスはまたひとしきり笑ってから、ソファへ座りなおし少し乱れたシャツの胸元を正しながら言った。
「さてと。…ところで、ルーナちゃん。」
と、改まった声音で彼女を呼んだ。
「…もう少し、ここに居てくれないかな。大事な話があるんだ」
静かにそう言ったマックスに、ルーナの眉がゆっくりと上がった。
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