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「……え? 勘違い?」
すっかり日も暮れ、オレンジ一色に染まった教室の中で、陽子と琉奈は一つの椅子に落ちついていた。琉奈の膝に、陽子が座っている状態だ。
「そ。もともと、実梨先パイのことを私はなんとも思ってなかったのよ。陽子の早とちりね」
「だって……いつも、センパイを振り向かせたいって言ってたじゃない……。あれは一体何だったの?」
「妬いてる陽子を見たくてつい」
「………………」
「それに、最初に好きになったのは、順番的に私の方が先だしね」
「どういうこと?」
「中学校までさかのぼるケド、あんたその時、なんで私と話すようになったのか覚えてる?」
「そりゃあ、いつも独りだった哀れな私を見兼ねて琉奈が……って、まさかあんた……」
「その時すでに、私は陽子に気があったの」
「マジで?」
「友達はつくらない、寄せ付けない。そのクールさに、きっと私は惹かれたんだと思う」
「……ということは、私はこの約四年間……」
「ふふ。素直になれない陽子、はたから見ていてかわいかったなぁ……」
「んなっ! ありえない! ずっと私の気持ちを知ってたの?」
「なんとなくそうかなぁ~って思い始めたのが中学で、確信を持ったのが高校生になってからかな」
「……めっちゃ恥ずいんだけど」
「その顔が見たかったの」
ふふふ、と屈託のない笑顔で言われて、ひょっとすると琉奈って自覚がないだけで相当拗らせていたのでは? と、陽子は密かに思った。
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