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「じゃあ……実梨センパイが、従姉だったっていうのもウソなの?」
「あ、それはホント」
「へっ?」
「いつまでも意気地無しの陽子に、ちょっと、ね? じれったくなっちゃって」
「うぐ……」
「でもまっ、結果オーライじゃない! 私の思惑通りに、陽子は妬いてくれて、少しだけ素直になってくれたんだもんっ。それだけでも、ウソをついたかいがあったね♪」
「琉奈ぁ~……! あんたねぇ……」
琉奈の膝の上に乗っていた陽子は、暴れようとしてバランスを崩し、
「あっ……」
椅子から落ちそうになった陽子を、琉奈が両手で抱き止める。そのまま彼女は、陽子の胸に顔を埋めていた。
「る、琉奈……?」
「良かった。陽子が、やっと、気づいてくれて」
「………………」
「私だって辛かったんだから。もし、陽子が私を好きじゃなかったら……私の、勘違いだったらって思うと……スゴく、怖かった」
「琉奈……」
「だから、今日は嬉しかった。私を好きでいてくれて、ありがとう」
到底実らないような恋を延々と続ける苦しみを味わっていたのは、なにも陽子だけではなかった。琉奈もまた、陽子と同じように悩み、苦しんでいた。近しい仲ほど、こうしたすれ違いが生まれていたとは皮肉だ。
それは琉奈の言葉通り、両者共に素直になれなかった結果。そのわだかまりが解けた今、溜め込んできた思いが、一気に放出される。
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