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キーンコーンカーンコーン――。
昼休みのチャイムが鳴った。……と同時に、千里は勢いよく立ち上がり、脇目も振らず教室を飛び出していた。
「こらぁっ! 澄谷!」
「すまん、先生!」
背後で叫んでいる担任の女教師に大声で謝りつつも、足を止めることはしない。
廊下を駆け、階段を下りる……というか飛び越える。この惑星に重力があって助かった。とにかく急がねばならない。
ものの数秒で、校舎の最下層に辿り着く。三年生に進級できたはいいが、教室が三階にあるというハンデは、かなりのタイムロスになる。
一階に降り立った千里のスピードはおとろえないどころか、増していく。
そして渡り廊下に差し掛かったとき、千里は見た。グラウンドから、一人の刺客が走ってくるのが。
焦りを感じ、管理棟へと続く渡り廊下の途中にたたずむ小屋まで、全力で疾走する。千里は、その小屋に用があるのだ。
グラウンドから駆けてくる生徒も、おそらく目的は一緒。その小屋を目掛けて、機関車のように両腕を振って近づいてくる。そして――。
千里と生徒は、ほぼ同タイミングで小屋の前まで来ると、これまた同時に叫んだ。
「YC3パンをくれ!」
「YC3パンを下さらない!?」
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