アンズを求めて三千里

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 指摘された杏子は、ムッとするわけでもなく、涼しい顔で、 「あら、別に減るものではないので、良いではありませんか。貴女だけの場所と思ったら、大間違いですわよ?」 「いや、あたしだけの場所だろうよ。関係者以外立ち入り禁止なんだから入ってくんなや」 「まあっ、失礼な。あたくしだってこの学園の正式な生徒……。謂わば貴女と立場は同等。関係者以外と見なされること自体、心外ですわ。そもそも、この場が厳重に施錠されているということはそれ相応の理由が――」 「イチイチ真面目に返すな。それとその口調、回りくどい。聞いていてイライラする」 「これがあたくしこと堂園財閥グループの跡取り娘、堂園杏子ですわ。この威厳あってのあたくし……崩すなどという無礼な真似は致し兼ねますわ!」 「そーかい。で、もう一度聞くが、なんでここにいんだ?」 「あら。貧相な庶民には理解に及ばないので?」 「だってさっき、減るものじゃない、ってごまかしたから」 「ごまかしてなどしていませんわ」 「んなら、ありゃなんだ?」  千里はフェンスにもたれ掛かりながら校庭を指差した。  学生の学舎という場に不釣り合いな、紺色のエプロンドレスを身に包んだ女性が、しかも複数人――校庭のあちこちで、まるで脱走した愛猫でも捜しているかのように右往左往している。歩くたびに、そのエプロンドレスの白いレースが、ヒラヒラとなびく。  全員が、頭にレースと同じ色の布を飾り付けていた。それが一般的にヘッドドレスと呼ばれるものを、千里は知らない。  
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