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始業式が終わってそれぞれの新しいクラスに戻って行く全校生徒。
体育館をぞろぞろと出ていく集団の中、女子に囲まれている俊輔を体育館の端に見遣り紗雪を連れて出口に向かう。
「あらま、すっごい人気。彼女いるのかな?」
後ろを振り返る紗雪の横を渡り廊下から見えるグラウンドに視線を流して歩いた。
どこからか舞い込んだ桜の花弁が砂塵と共に舞い上がり飛んでいく。煙霧を巻き起こす風が不快でしかなかった。
「……いるんじゃない?」
登校してきたときは新しいクラス発表でひしめきあっていた3年生の教室前の廊下も今はそれぞれのクラスに落ち着いて疎らになっている。
1年のときも同じクラスだった紗雪とまた一緒になれたのは幸先の良いスタートだったのに…。
着任式での顔ぶれを、というか一人しか覚えてないけれど、思い出して、私は小さくため息を溢した。
なんか面倒なことになったな……。
教室の前で私は躊躇いがちに戸を抜けた。
教室内では既にほとんど皆が席に着き、紗雪と少し話してから私たちもそれぞれの席に着いた。
間もなくして担任もクラスにやってきた。
その後ろには、壇上に立っていた彼の姿。
その姿を捉えると、また細胞たちがザワザワと騒ぎ出し私の平常心を乱していく。
本能的に嫌だと思うものの、逃げ場はないのも理解している。
またざわつく教室内でドクドクと妙な緊張感を感じながら、私は密かに拳を握りしめ、ヒュと小さく呼吸を整えた。
大丈夫、フツーにしていればいい。
気にしなければいいんだ。
そう、言い聞かせて。
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