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選択授業は週に2日、月曜日と木曜日にある。 月曜日は朝一で、木曜日は午後一の時間割になっていた。 「ふぁあ」と気の抜けた声がどこからか聞こえ、顔を上げれば既に机に伏す姿が教室内にちらほら見える。 その様に私の眠気も誘われて同じように机に平伏した。 朝一から化学の授業とかやってられない。 エンジンがかからないうちに走り出せって言われても土台無理な話だ。 薬品とちょっとカビ臭いこの空間は静かだった。 暗幕がサイドに纏まって開け放たれた窓から見える空は清々しいほどの青。程よい暖かさが余計に夢の中へと手を引いた。 時折吹き込む風がひっそりした廊下の方へと流れていく。 廊下の伸びた先に他クラスの生徒がいるのか疑うくらい、この空間だけ切り取られたように静けさを保っていた。 そのせいで聴覚が階段を上がってくる足音を容易く拾い、開け放しの扉の前でこの教室に入るのを一瞬逡巡するのが手に取るようにわかった。 皆机で寝ている静かな空間に音を立てれば人目を引くから入るのを一瞬躊躇うのだ。 でもすぐ席に着いて同じような体勢をとりはじめるのだけど。 予鈴までまだ少し時間がある。 時折髪を浚う風を肌に感じながら私は瞼を閉じた。
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