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本間家で食事したあの後、予想通りというか当然というか、母は帰って来るなり私に詰問した。 「なんで教えてくれなかったの」とか「俊くんに会ってたならそう言ってくれたら良かったのに」とか「失礼な態度とってないで挨拶くらいちゃんとしたの?」とかどうでもいいことを並べられて終始うんざりした。 だから言わなかったのに、と半ば諦めるように聞き流しながら思った通りの母の言動に返す言葉もなく。 私の気持ちとは別に、母にも思うところはあるのだろうがそんなこと関係ない。 それよりも私はあの日俊輔と交わした会話に知らず知らず意識は持っていかれて、当時の思い出と一緒に私の中をぐちゃぐちゃに掻き乱した。 気付いてくれていた、という事実。 そして学校での裏腹の態度に、大人の本音と建前が見え隠れして、頭では理解しているつもりなのにどこか納得いかなくて。 他の生徒同様に、普通の一生徒として接すれば何の問題もなく学校生活を送れるのに。 それが望ましい、そうあるべきだと思うのに、しこりが残ってるみたいにモヤモヤしている。 それはあの場で俊輔が私と話す仕種や態度にあの頃と変わらず接しようとするのを見たから。 あのとき彼は出来てしまった溝を少しでも埋めようと自ら近付いてくれた気がしたから。 だから、 あの優しさをまた手に取りたいなんて少しでも思ってしまった。 頭では拒絶するべきだとわかっている。 また傷付くようなことになる前に、予防線をはるべきだと。 頭では、わかっているんだ。 なのに、 懲りてない、自分。 救いようがない。
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