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授業で俊輔を見るのは2度目。
今日もノーネクタイのYシャツの上から白衣を纏って理科準備室の扉から颯爽と出てきて壇上に上がった。
頭をゆっくり上げれば、同じように寝ていた生徒たちの頭も起き出したところだった。
「おはよう。みんな頭起こせよー」
「先生、ねみぃ。無理。寝る。」
「起きろ。寝るな。ノートとれ。」
「………」
「……言ってるそばから寝るなよ」
苦笑しながら壇上から身を乗り出して、誰もいない一番前の席を丸めた教科書でバシンと叩く。
ちょうど机に寝そうになってた磯部くんの前の席で、音にビクッと飛び起きてまた気怠げに身体を机に預けた磯部くんは顎を突き出し俊輔を疎ましげな視線で睨んだ。
乗り出した俊輔との距離が近くて一瞬気後れしたようだけど、磯部くんは膨れっ面で不満を口にする。
「朝一からとか時間割おかしいよ先生。集中できるわけない」
「他の教科ならいいのか?」
「……そーいう問題じゃ…」
「なら同じだろ。」
体勢を戻して丸めた教科書を捲る俊輔が一緒に持っていたファイルを開いて教室を見回した。
一瞬、目が合うも、何も言われず。
当然なんだけど。
ちょっと緊張していたのが馬鹿らしくなった。
あんまり普通に振る舞うから、ちょっとカチンとくるのもあって、でもすぐそうじゃないって思い直す。
だってこれが"普通"なんだから。
"特別"を求めているのが間違ってる。
一生徒を特別扱いするわけないのだ。
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