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やりにくいな、と朝から気分が下がった時、視線を感じて俯き気味だった顔を上げた。 バッチリと合った目と目。 俊輔と私。 え、と固まって真っ直ぐな瞳から目が逸らせないまま、身体が勝手に意識し出して心拍数がぐっと上がりだす。 なんで見てるの、と変な焦りを感じて動けない。 でも直ぐにそれが勘違いだと理解する。 「久米(クメ)、化学担当の本間だ、よろしくな。」 「……あー、はい。」 やる気ない低音ボイスに一つ前の席の猫ッ毛の彼に向けられた視線だったのがわかって、途端に思い過ごしに恥ずかしくなって顔を背けた。 何勘違いしてるんだ、私。 思い上がりもいいところだ。 「今日は全員いるなー」と独り言のようにボソリと呟いたあと、教科書を捲る長い指。 「授業始めます。」 淡々と始まる授業に、彼の声に静かに耳を傾けた。
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