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滑るように流れる黒板のチョークの擦れる音、
時折手元に落ちる視線、
振り返るときの横顔、
プリントに伸ばされた長い指、
柔らかいその眼差しの先、
彼の動向をちらちら確認しながらノートをとる私。
静けさの中に抑揚なく響く俊輔の声は不思議と落ち着く。
なのにどこかで寂しいと感じるのは自分でもおかしいと思う。
彼の声を子守唄に一部の生徒はやっぱり睡魔に負けて、俊輔が声を掛けては起こしていた。
女子に至ってはみんなしっかり起きていて、なんでか朝からメイクをバッチリしている子や髪型を鏡で何度もチェックする子が目立った。
どんだけ身だしなみに力入れてるんだ、と若干疎ましくもあり、呆れも半分。
「あ、そうだ。忘れないうちに配っとくわ」
一通り黒板一杯の化学記号と反応式と実験の説明を終えた後、思い出したように俊輔がシンク横に積まれたプリントの束を手に取った。
「来週の実験の予習プリントと各クラスの評価アンケートな。
面談の連絡事項挟んであるらしいから確認よろしく」
言いながらプリントを前列の生徒に配っていく。
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