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「ねぇ、久米くん、ここ置いとくよ」 プリントが回ってこないなと顔を向けたちょうどその時、前の席の男子を揺するそのまた前の席の女子と目が合った。 肩を結構揺すっているけどそんなのお構い無しに寝ている彼に面倒そうな声と表情で腕の隙間にプリントを突っ込んでる。 「橘さん、これ。」 「あ、うん。ありがと」 前の席を飛ばして横から私の分のプリントを渡してくれた彼女は不満をぶつけるようにもう一度彼の肩を叩いて前を向いた。 それが功を奏したのか、少ししてモゾモゾ腕を動かし出した彼は重そうに頭を少し持ち上げてキョロキョロと辺りを見てから髪をガシガシ掻き、ほとんど机に上半身を預けた格好で起きた。 サボり魔っぽいな、とその様子を尻目に手元にきたプリントに目を落とす。 「…あ」 これ、名前違う。 前の人のだ。 ちょっと躊躇したものの、また寝てしまう前にさっさと交換してもらわないと後々面倒だと思い、ためらいがちに前の猫背に人差し指でツンツンして呼び掛ける。 「ごめん、プリント違うっぽい」
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