見てる……

10/65
前へ
/135ページ
次へ
   結局、命婦のお道具を使うのも勿体無いということで。  女官たちが貸してくれた古いお道具や、欠けたお道具を使うことになった。  道雅が見つけたり、見つけた人を見つけたりすると、歌を詠んだり詠ませたりしようとするので、そのときばかりは手間取ったが、比較的、順調に遊戯は進んでいた。  意外と見つけられない。  言い出したのは、私なのに、と成子がウロウロしていると、声が聞こえた。 「此処だ、此処だ」  ん? 「此処だ、此処だ」  床下から声がする。  いつもとは違う位置だ。  床に耳を押し当てると、近くに居た命婦が、 「またなにをしてらっしゃるんです」 と見咎める。  しっ、と口許に指先を当てた。 「此処だ、成子。  此処にある」
/135ページ

最初のコメントを投稿しよう!

248人が本棚に入れています
本棚に追加