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お仕着せの立派な女御には気が向いていないらしく、帝は、せっせと手に入れられもしない、この斎王に貢ぎ物をしているようなのだが。
「こちらにわたくしのお道具があります。
こちらで。
ぜひっ、こちらでっ」
命婦は、ずいっと成子の前に黒塗りの箱を差し出した。
これだとて高価なものだ。
斎王の持つそれには遠く及ばないが。
なくされては困るが、致し方ない。
帝からの贈り物を紛失するよりはマシだ。
「でもそれ……」
「よろしいのですっ」
成子は迫力負けしたようだった。
「じゃあ、屋敷のもので手の空いてるもの、総出でね。
勝ったものには、私がなにかあげるわ」
「それ、斎王様がお勝ちになったら、どうなさるんです?」
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